コラム

山陰(鳥取・島根)の家づくりに高断熱・高気密が必要な理由|HEAT20理事・岩前篤先生に聞く「断熱と健康」

山陰(鳥取・島根)で家を建てるなら、断熱等級6(HEAT20 G2相当)以上が目安です。日本の高断熱住宅の基準づくりを牽引してきたHEAT20理事・岩前篤先生と、アート建工代表・魚谷の対談から、断熱性能と健康の関係を解説します。

この記事のポイント

・山陰は冬の日照時間が短く湿度も高いため、全国標準の断熱仕様では暖かい家になりにくい

・断熱性能を高めた家では、冷え性・しもやけ・花粉症・皮膚炎・風邪などの改善報告がある

・岩前先生の言葉「服はソリューションではなく、ストレス」——厚着で寒さをしのぐ発想そのものが、肌へのストレスになる

・アート建工の標準は断熱等級6(HEAT20 G2以上クラス・UA値0.28)、気密はC値 全棟平均0.67(2023年度調べ)

日本の断熱基準をつくってきた研究者に、山陰の家づくりを聞きました

「断熱性能が高い家は快適です」——住宅会社はよくこう言います。ただ、暖かい・涼しいという説明だけでは、本当に何が変わるのかがなかなか伝わりません。

そこでアート建工は、岩前篤(いわまえ あつし)先生を体験館アートラボにお迎えし、代表・魚谷との対談を行いました。岩前先生は大手ハウスメーカーの研究所で住宅性能の技術開発に携わったのち、近畿大学の教授・副学長を歴任。現在は日本の高断熱住宅の基準をつくっているHEAT20の理事を務める、住宅断熱の第一人者です。

結論を先にお伝えします。断熱は「快適さのためのぜいたく」ではなく、住む人の健康を支える土台である。そして山陰では、その必要性が全国平均よりもはっきりと高い——ということです。

① なぜ山陰の家づくりに「高断熱・高気密」が不可欠なのか

断熱の必要性は全国どこでも同じ、というわけではありません。山陰には二つの気候特性があります。

一つ目は、冬の日照時間が極端に短いこと。太平洋側なら冬でも晴れる日が多く、南向きの窓から入る日射で室内が自然に暖まりますが、山陰の冬は曇りと雨・雪が続き、この「太陽による自然暖房」が期待できません。家自体の断熱性能を高めて、一度暖めた熱を逃がさない魔法瓶のような家にする必要があります。国の省エネ地域区分では鳥取県米子市は東京や大阪と同じ「6地域」ですが、山陰の暖房負荷は東京の約1.7倍。地域区分の数字を信じて全国標準の仕様で建てると、冬の寒さと光熱費に悩まされることになります。

二つ目は、年間を通じて湿度が高いこと。松江市の年間平均湿度は約75%で、全国平均(約68%)を大きく上回ります。湿度が高い地域では、気密性能(C値)が低い家ほど注意が必要です。気密測定を行っていない住宅ではC値が2.0〜5.0程度になることもあり、壁の隙間から湿った空気が入り込みやすくなります。防湿層の施工や換気が十分でない場合、壁の内側で「内部結露」が起こることがあります。目に見えないところでカビやダニを発生させ、アトピーやぜんそくの原因になるだけでなく、木材を腐らせて家の寿命を縮めます。

② 断熱性能が健康に与える影響|冷え性・しもやけ・花粉症・皮膚炎

岩前先生が住宅の断熱を「健康」という切り口で語るようになったきっかけは、調査結果でした。断熱性能の高い家に住み替えた人たちに、さまざまな症状の改善が見られる割合が高い——というデータです。

症状・悩み断熱性能を高めたときの変化
手足の冷え(冷え性)足元の温度が上がって上下の温度差が縮まり、つま先の冷えを感じにくくなる
しもやけ冬に足の指がしもやけになる、という悩みが起きにくくなる
花粉症・目のかゆみ家のなかでは症状が出なくなった、という声がある
皮膚炎(アトピー)・肌荒れ厚手の靴下や重ね着による肌への刺激が減ることで、改善したという報告がある
風邪のひきやすさそういえば風邪をひきにくくなった、という声が多く聞かれる

特に分かりやすいのが手足の冷えです。冷えの原因は、冷たい外気が入ってくることと断熱性能が低いこと。この原因を減らしていくと部屋の下のほうの温度が上がり、上下の温度差が縮まっていきます。ある水準を超えると、つま先の冷えを感じなくなる——というのが岩前先生の説明です。なお、サーキュレーターで空気を回しても冷えは解消しません。むしろ気流で体感温度が下がることさえあります。

③ 「服はソリューションではなく、ストレス」

「服は、ソリューションではなくてストレスなんですよ」——岩前篤先生(HEAT20理事)

「寒ければ厚着すればいい」。長く語られてきた常識を、岩前先生ははっきり否定します。冬に厚手の靴下を家のなかでも履き続けていると、ゴムの部分がこすれてかゆくなり、掻いているうちに皮膚炎になって荒れてくる。衣服は、肌にとって確実にストレスなのです。断熱性能を高めた家でアトピーの改善報告が増えるのも、根本的に衣服の量が減っているからではないか——というのが岩前先生の見立てです。

分かりやすいのが子どもの行動です。暖かい家で育った子どもは、友達の家でも玄関で靴下まで脱いでしまう。そのほうが楽だからです。衣服がストレスであることを、子どもの行動が物語っています。

④ 暖房機器では解決できない|天井25℃・足元10℃という15℃の温度差

「断熱はそこそこでも、大きなエアコンや床暖房など機械の力で補えばいいのでは」——実は1990年代の日本の住宅業界も、まさにこの方向で試行錯誤を重ねました。

結果として分かったのは、断熱性能が低い家で暖房を強化しても温度差だけが残るということです。極端な例では、天井に埋め込んだエアコンから温風を吹き出すと、天井付近は25℃なのに足元は10℃のまま。実に15℃もの温度差が生まれます。ここで吹き出し温度をさらに上げても、全体の温度がスライドして上がるだけで、上下の温度差は縮まりません。頭がのぼせて足元は寒いという状態は解消されず、電気代だけが上がっていきます。

この本質的な問題を解決する答えが、断熱と気密でした。暖房機器のカタログ性能を比べるより先に、家の外皮(壁・窓・屋根・床)の性能をどこまで高めるかを考えるべきなのは、そのためです。

⑤ 山陰では断熱等級はいくつを目指すべきか

断熱等級位置づけ山陰での推奨度
断熱等級4(平成4年基準)
UA値 0.87以下
2025年4月から義務化された最低ライン✕ 推奨しない
断熱等級5(ZEH水準)
UA値 0.60以下
2030年度までの引き上げ目標水準△ 山陰では物足りない
断熱等級6(HEAT20 G2相当)
UA値 0.46以下
アート建工の標準仕様◎ 山陰での推奨基準
断熱等級6.5(独自区分)※2
UA値 0.28以下
アート建工の実績値◎◎山陰での推奨基準
断熱等級7(HEAT20 G3相当)
UA値 0.26以下
現行制度の最高等級○ 予算に余裕があれば

※1UA値は6地域(鳥取・島根が該当)の基準値。出典:HEAT20 https://www.heat20.jp/grade/

※2断熱等級6.5は公式区分ではなく、UA値0.28の水準を分かりやすく示すための独自の表現

アート建工の標準仕様は、断熱性能でHEAT20 G2以上クラス(6地域基準)、UA値0.28です。6地域のHEAT20 G2基準はUA値0.46以下ですから、それを大きく上回り、現行制度の最高等級である断熱等級7(HEAT20 G3・UA値0.26以下)に迫る水準ということになります。窓にはLow-Eトリプルガラス・アルゴンガス入りの高断熱サッシを、外壁・天井・床下には高密度断熱材を採用。

気密についても、岩前先生から重要な指摘がありました。断熱材はおおむね10年、20年と性能を維持しますが、気密性能は5年後・10年後と下がっていく傾向があります。だからこそ、その分も見込んで初期の段階でより高くしておく必要がある、ということです。

〜数字で見る、気密の差〜

アート建工の気密性能:C値 全棟平均 0.67(2023年度調べ)

気密測定を行っていない住宅では、C値が2.0〜5.0程度になることも珍しくありません。アート建工は全棟で気密測定を実施し、1棟ごとに数値を確認しています。自社データでは、C値2.0の家とC値0.7の家で光熱費が年間2万円程度違います。10年住めば約20万円、30年なら約60万円の差です。初期の建築費は上がりますが、住み続けるあいだの光熱費で差は縮まっていきます。(延床120㎡、UA0.28、鳥取県鳥取市、2人家族想定。)※条件により差は変動します。

⑥ よくある質問(FAQ)

Q. 山陰(鳥取・島根)で新築を建てる際、断熱等級はいくつを目指すべきですか?

A. 最低でも断熱等級6(HEAT20 G2相当)を目安にしてください。山陰は冬の日照時間が短く、太陽の熱による自然の暖房効果が期待しにくいため、建物の外皮自体の断熱性能を高めることが極めて重要になります。

Q. エアコンや床暖房を強くすれば、断熱性能が低い家でも暖かくなりますか?

A. いいえ、解決しません。断熱性の低い家で暖房を強めると、天井付近が25℃まで上がっても足元は10℃のままというように、15℃以上の上下の温度差が生じます。吹き出し温度を上げても全体がスライドするだけで、足元は暖かくなりません。足元の冷えを根本的に解消するには、高断熱・高気密化が必要です。

Q. 「高断熱な家」は、住む人の健康にどんなメリットがありますか?

A. 手足の冷え(冷え性)の改善やしもやけの防止に加え、花粉症、目のかゆみ、皮膚炎(アトピー)などのアレルギー症状、風邪のひきにくさなど、日常の多くの健康課題が改善したという報告が出ています。また、厚着をしなくてよくなることで、衣服による肌へのストレスからも解放されます。

まとめ

対談の最後に、岩前先生は2050年の住宅についてこう語りました。2050年は遠い先ではなく、今の延長線上にある。だから今できるだけレベルの高い家をつくっておくことが、そのまま未来につながっていく——。家は、次の世代への遺産になるということです。

断熱性能は、カタログの数字を眺めているだけではなかなか実感できません。だからこそアート建工は、実際に触れて確かめていただける体験館をつくりました。山陰で家づくりを考えている方は、まず体感してみてください。

断熱性能の違いは、アートラボで体感できます。

アート建工の体験館「アートラボ」では、断熱等級ごとの部屋を実際に行き来して温度差を体感いただけます。サッシ・断熱材の違い、耐震の仕組みもその場でご覧いただけます。

▶アートラボ体験・見学のご予約はこちら:https://art-kenko.com/

▶ 対談動画はこちら:https://youtu.be/6j6nS3qwY3w